私ぐらいの年齢になると、必ずこんな話を始めます。
「昔、ラジカセでテレビの音楽番組の録音してましたよねーーー」
うざいですね。わかっています。
昭和50年代生まれの私は、テレビの前にラジカセを置き、お目当ての曲が始まるのを待っていました。
曲の直前に「再生」と赤い「録音」ボタンを同時に押す。そして、曲が終わるまで誰も話しかけないでくれと祈る。
そんなときに限って母親が話しかけてくるんですよ。
「おいーーー!」
「うしろゆびさされ組」を録ってたのに。
ちなみに、ゆうゆより高井麻巳子派でした。工藤静香は「うしろ髪ひかれ隊」のほうです。若い人には、もう何の話かわからないでしょう。
初めて買ったシングルレコードは、たしか長渕剛の「グッバイ青春」。初めて買ったCDは、レベッカの「フレンズ」だったと思います。
ダブルラジカセが出たときは衝撃でした。そこにCDまで付いたときには、未来が来たと思った。
友達がSONYのリバティーを買ったときなんて、そいつはクラスの王様でした。しかもレーザーディスクまで持っていた。でかいんですよ、あれ。
今はスマホが一台あれば、聴きたい曲をその場で聴けます。好きな場面を何度でも見られます。
あの頃の自分に見せたら、きっと腰を抜かすでしょう。
世の中は、間違いなく進化しました。
では、私たちはその分、幸せになったのでしょうか。
もちろん、便利になって助かったことは山ほどあります。だから昔に戻りたいわけではありません。
ただ、その頃の自分は、便利になるほど、心躍り満たされた。
今では、欲しいものがすぐ届く。知りたいことはすぐわかる。
離れた人とも、顔を見て話せる。
かつて夢のようだったことが、今では日常です。
それなのに、「ありがたい」より先に「不満」が出てくることがあります。
荷物が一日遅れた。返信が遅い。
あったかご飯を配膳ロボが運んでくる・・・。
そして定員はロボットよりもロボットっぽく愛想がない・・・。
不便だった頃なら喜んでいたはずのサービスを受けながら、その中にある小さな欠点を探して怒っている。
そんな光景を見ると、何だか不思議な気持ちになります。
そして、私自身もその一人です。
便利さには、慣れます。
最初は感動したことも、繰り返すうちに「当然」になる。
すると、次はその当然を超えるものを求め始める。
手に入れた幸せを数える前に、手に入らなかったものを数えてしまう。
便利さの中に、欠点をみつけイライラする。
便利さが増えれば、不満が減るとは限らないんですね。むしろ、便利さと一緒に「当たり前」の基準まで上がっていくのかもしれません。
そしていつしか世の中の人は、欠点や間違いを探すスキルだけは爆上がりしている・・・。
美容室を経営していても、思い当たることがあります。
お客様が来てくださる。スタッフが働いてくれる。今日も店を開けられる。
どれも、会社を始めた頃の私なら心から喜んでいたことです。
それなのに、売上が思ったほど伸びない日には、そのありがたさを忘れてしまう。
スタッフがちょっとした行動や言動が気になる。
いつの間にか、そこにあるものより、思い通りにならないことばかり見ている。
そんな自分に気づくことがあります。
私は、怒ること自体が悪いとは思いません。
理不尽なことには怒っていい。変えなければならないこともあります。
ただ、自分の期待どおりにならないというだけで、誰かを責め続けても、きっと幸せにはなれない。
世の中がどれだけ便利になっても、「もっと」「まだ足りない」と言い続ける限り、満たされる日は来ないのではないでしょうか。
逆に、足りないものがあっても、今あるものに気づける人はいる。
思い通りにいかない日でも、家族と食事をする。好きな音楽を聴く。誰かと笑う。
幸福は、世の中の進化が届けてくれる完成品ではないのだと思います。
カセットテープに好きな曲を詰めて、レタリングシートで「MY BEST」なんてタイトルを付けていた頃なんて、今思えば私は不便。
録音を邪魔されれば怒っていたし、お小遣いも少なかった。
でも、次はどの曲を入れようかと考えている時間は、確かに楽しかった。
今の私には、あの頃より多くのものがあります。
家族がいて、スタッフがいて、仕事があって、好きな音楽をいつでも聴ける。
足りないものばかり見ていたら、それさえ見えなくなるのでしょう。
進化と幸福は、決して比例しない。
便利な時代に生きながら、ずっと不満を抱えて過ごすこともできる。
だから私は、次の便利さを待つより先に、今あるものをちゃんと見たほうが、優しい気持ちになれる。
お父さん、天国のお母さん、お兄さん、妻、息子、スタッフのみんな。
いつもありがとう。
さて、久しぶりに「うしろゆびさされ組」を聴こうかな。
「象さんのスキャンティ」……いや、今日は「バナナの涙」にしよう。
YOUTUBEで工藤静香でも見るか・・・。
これミラクルひかるじゃん・・・
おすすめ書籍⇩





コメント