美容師を30年やってきて、今でも思うことがあります。
売れる美容師と、なかなか売上が伸びない美容師。
その違いは何だろう。
技術力?
接客力?
提案力?
もちろん全部大切です。
でも、意外と見落とされているものがあります。
それが、
「時間」です。
美容師は、自分の技術を磨くことには一生懸命です。
カットが上手くなりたい。
カラーが上手くなりたい。
もっと丁寧な仕事がしたい。
それは素晴らしいことだと思う。
ただ、
「丁寧にやること」と「時間をかけること」は、本当に同じなのでしょうか。
今日はそんな話です。
美容師は、やっぱり「人気商売」だと思う
昔、
「美容師なんてホストやキャバ嬢と同じ人気商売だよ」
と言われたことがあります。
良い意味だったのか、悪い意味だったのかは分かりません(笑)
最近、元芸能人がホストクラブを立て直す番組見たんだけど、
ホスト業界も、「チーム力」が大切なんですね・・・。
まあ、置いといて・・・。
でも、確かに共通するところはある。
見た目がいいだけでは売れない。
技術があるだけでも売れない。
「またこの人に会いたい」
「またこの人にお願いしたい」
そう思ってもらえる人に、お客様は集まります。
ただし、美容師には大きな違いがあります。
美容師は、時間そのものを追加で販売する仕事ではないということです。
1時間5,000円のカットに2時間かかったから、
「今日は10,000円です」
とは言えない(笑)
逆に30分で終わったから、
「今日は半額の2,500円でいいですよ」
ともならない。
つまり美容師は、
同じ時間の中で、どれだけ高い価値を提供できるか。
ここが非常に重要な仕事なんです。
売上を上げるために「何を売るか」ばかり考えていないか
売上を上げたい。
そうなると美容師は、
「トリートメントを提案しよう」
「ヘッドスパをおすすめしよう」
「店販をもっと売ろう」
と考えます。
もちろん必要な提案なら、どんどんした方がいい。
お客様の髪が良くなるなら、僕も提案します。
ただ、
必要のないものまで売る必要はない。
売上を作るためだけに商品を売る。
キャンペーンだから売る。
新商品が入ったから売る。
これを続けていると、いつか限界が来ます。
お客様が買うのは、
「美容師に勧められたから」
ではなく、
「自分に必要だと思ったから」
であるべきだと思っています。
では、商品を売ること以外に、美容師が売上を伸ばす方法はないのか。
あります。
僕が昔から大切だと思っているのが、
時間生産性です。
「時間生産性」という言葉が嫌いな美容師もいる
時間生産性という言葉を出すと、
「美容師は工場じゃない」
「効率ばかり求めたら接客が雑になる」
「私は一人ひとり丁寧に仕事をしたい」
そんな声が聞こえてきそうです。
分かります。
僕も、効率のために仕事を雑にするのは大嫌いです。
でも、
早いことと、雑なことは違います。
ここをごちゃ混ぜにしてはいけない。
たとえば二人の美容師がいるとします。
美容師A。
技術へのこだわりが強く、一人のお客様にじっくり時間をかける職人気質。
美容師B。
無駄な動きが少なく、判断も施術も早い。短時間でお客様を仕上げる。
この二人を比べると、Bの方が売上も指名数も多いことがあります。
単純に、一日に担当できるお客様が増えるから。
でも、それだけじゃないと思うんです。
「早い美容師は雑」という思い込み
面白いのが、
伸び悩んでいる美容師Aが、売れている美容師Bの仕事を見ても、
「Bは雑だから早いんだよ」
と片付けてしまうことがある。
そして、自分と似たタイプの美容師から学ぼうとする。
これ、ものすごくもったいない。
もちろん本当に雑な美容師もいます(笑)
予約を詰め込みすぎて、仕事が荒れているなら話は別です。
でも、
早いのに仕上がりがいい美容師には、必ず理由があります。
判断が早い。
カウンセリングが的確。
薬剤選定で迷わない。
道具を探さない。
動線に無駄がない。
必要以上に髪を触らない。
次の工程を考えながら仕事をしている。
つまり、
雑だから早いのではなく、無駄がないから早い。
ここには立派な技術があります。
お客様は「長く美容室にいたい」わけではない
「うちのお客様は、ゆっくり過ごしたい方が多いから」
これもよく聞きます。
でも、本当にそうでしょうか。
お客様が求めている「ゆっくり」は、
施術時間を長くしてほしいという意味ではないと思うんです。
慌ただしくされたくない。
雑に扱われたくない。
リラックスしたい。
落ち着いて過ごしたい。
おそらく、そういう意味です。
カットもカラーもパーマも、長時間座っていれば疲れます。
肩も凝る。
腰も痛くなる。
美容室のあとに予定がある人もいる。
同じ仕上がりなら、
2時間で終わる仕事を3時間かけてほしい人は、そんなに多くないはずです。
ここは美容師側の「丁寧にやってあげたい」と、お客様側の「早く綺麗になりたい」がズレやすいところだと思っています。
早く終わることは「時間のプレゼント」になる
昔の記事を書いたとき、僕はこんな表現をしました。
「時間のプレゼント」
今でも、この考えは変わっていません。
たとえば、
カット・カラー・パーマで3時間30分。
これが、同じクオリティで2時間30分で終わったとする。
お客様には、
1時間が返ってきます。
その1時間で買い物ができる。
家族と過ごせる。
カフェに行ける。
仕事ができる。
家に帰って休むこともできる。
あるいは、
「今日は時間があるからヘッドスパもお願いしようかな」
となるかもしれない。
これって、すごく大きな価値だと思うんです。
美容師側からすれば時間生産性。
でも、お客様側から見れば、
自分の時間を大切にしてくれるサービスです。
「早く終わらせる」と「急いで終わらせる」は違う
ここは絶対に間違えてはいけません。
僕が言いたいのは、
お客様を急いで追い出せ
という話ではありません(笑)
「早く終わらせる」と、
「急いで終わらせる」は、
まったく違う。
目指すのは、
必要なことには時間を使い、必要のないことには時間を使わない仕事。
カウンセリングが必要なら、しっかり聞く。
難しい技術なら、必要な時間をかける。
お客様が悩んでいるなら、相談に乗る。
でも、
薬剤を取りに何度もバックルームへ行く。
道具を探す。
工程ごとに迷う。
同じところを何度も切り直す。
次のお客様の準備ができていない。
こういう時間は、お客様にとって何の価値もありません。
削るべきなのは、
サービスではなく、無駄です。
時間生産性が上がると、売上だけではないものが変わる
時間生産性を高めると、一日に担当できるお客様が増えます。
当然、売上も上がりやすくなる。
でも、メリットはそれだけじゃない。
予約時間の見込みが立つ。
次回予約を取りやすくなる。
お客様の来店サイクルが安定する。
多少予定がズレても焦らなくなる。
必要ならマッサージや会話に時間を使える。
お客様に合ったヘアケアを説明する余裕もできる。
そして何より、
美容師自身が疲れにくくなる。
これ、長く美容師を続けるうえではかなり大事です。
時間生産性というと、
「もっと売上を上げろ」
という経営者側の言葉に聞こえるかもしれません。
でも本来は違う。
お客様にも、美容師にも、時間を返すための考え方。
僕はそう思っています。
美容師が絶対に増やせないもの
どんなに技術が進歩しても、
僕たち美容師には絶対に増やせないものがあります。
それが、
時間です。
AIが進化しても、
予約システムが便利になっても、
SNSで集客できるようになっても、
今のところ僕たちは画面越しに髪を切れません。
お客様一人ひとりと向き合って、
自分の手を使って仕事をする。
美容師という仕事の根本は、30年前とそれほど変わっていない。
だからこそ、
美容師にとって時間は、ものすごく高価な資源です。
自分の時間。
スタッフの時間。
そして、
お客様の時間。
そのすべてを大切にできる美容師は、結果として長く選ばれる美容師になるんじゃないでしょうか。
技術を磨く。
接客を磨く。
提案力を磨く。
もちろん全部大切。
でも、
「同じクオリティを、もっと短い時間で提供できないか?」
これも立派な技術向上だと僕は思っています。
早さは、雑さではない。
早さは、相手の時間を大切にするサービスにもなる。
30年美容師をやってきた今でも、僕はそう思っています。
……なんて「時間が大事だ」と長々書いていたら、
この記事を書くのに、けっこう時間がかかってしまった。
こっちの時間生産性の悪さよ(笑)


