避けられない値上げ。美容室が考えなければいけないこと。

失敗から学ぶ美容室経営


「ここのサロンは、ちょっと高いよね」

たまに言われます。

経営者としては、なかなか耳の痛い言葉です。

 

材料、設備、それぞれにお金と時間をかけています。

スタッフも日々、自己研鑽しています。

だから、つい説明したくなる。

 

 

でも、お客様が知りたいのは、私たちがどれだけ苦労しているかではありません。

「そのお金を払って、私はどうなれるのか」

たぶん、そこなんですよね。

 

 

昔、このブログで「日本の貧困化」と「美容室の価値」について書いたことがありました。

 

読み返してみると、世の中への悲観と、自分の仕事への熱さが、なかなかの勢いで混ざっていました。

若かったんでしょうね。

 

いや、すでにそこそこの年齢でしたけど。

 

今、改めて考えてみたいと思います。

 

生活にかかるお金は、確かに増えています。総務省の統計では、2025年平均の消費者物価指数は前年より3.2%上昇しました。

出典:総務省統計局

 

だからといって、「日本は貧乏になった。もう明るい未来はない」と言い切っても、美容室の経営は良くなりません。

 

私たちが考えるべきなのは、限られたお金と時間の中で、なぜこの店を選んでいただくのか、ということです。

 

安く、短時間で整えたい日もある。

 

少しお金をかけて、ゆっくり相談したい日もある。

 

カット専門店にも、カラー専門店にも、それぞれの役割があります

必要なサービスを絞り、価格と時間を分かりやすくする。それも立派な価値です。

 

 

私たちが同じやり方をするかどうかは、別の話ですが。

 

 

私の会社は、大きな会社ではありません。

最盛期には4店舗ありましたが、今は1店舗です。

 

 

広げることを考えていた頃とは、経営を見る目も変わりました。

今の私が大切にしたいのは、この店に来てくださるお客様と、ここで働くスタッフにとって、続いていく意味のある店にすることです。

 

その判断基準として、昔から変わらず持っている言葉があります。

「色」と「熱」です。

 

 

同じように見えるカットでも、担当する美容師によって、受け取るものは違う。

 

仕上がりはもちろんですが、相談のしやすさ、説明の分かりやすさ、翌朝の扱いやすさまで含めると、美容室の仕事は写真一枚では伝わりません。

 

私が言う「色」は、その美容師らしい提案や気遣いのことです。

 

悩みを言葉にするのが苦手なお客様から、少しずつ話を引き出せる人。

 

髪の状態と生活習慣を見ながら、無理なく続けられる方法を考えられる人。

 

静かに過ごしたい気持ちを察して、必要なことだけを丁寧に伝えられる人。

 

それぞれに、違う色があります。

 

そして「熱」は、お客様のために、もう一歩考える姿勢です。

 

声が大きいことでも、テンションが高いことでもありません。

 

落ち着いていても、仕事の端々に熱が伝わる人はいます。

 

以前は、そんな人を「青い炎みたいだな」と思っていました。

 

派手ではない。でも、ちゃんと温かい。

お客様が店を出た後まで考えている。

次に来るまでの髪の変化や、ご自宅でのお手入れまで想像している。

 

そういう仕事に、私は美容師の価値を感じます。

 

ただ、

その「色と熱」を、スタッフの気合いだけに頼ってはいけない。

 

予約を詰め込み、目の前のお客様で精いっぱいになっているところへ、「もっと気を配って」「もっと提案して」と言っても、限界があります。

 

食事も落ち着いて取れない。


予定どおりに帰れない。


疲れて、次の日を迎える。

 

そんな働き方の上に、ずっと良い接客を積み重ねるのは難しいと思うのです。

 

美容室も一部では人手不足。

これまでと同じように、アシスタントの力を借りながら担当するお客様を増やすことは難しくなる。

だから、予約の取り方も、役割も、給与の考え方も、見直す必要がある。

 

「もっと頑張ろう」で済ませてはいけないところです。

 

一人ひとりが担当するお客様に向き合い、その仕事がきちんと評価される。

 

忙しい人がいれば、周りが支える。

 

個人の成果と、お店全体の成果を、両方喜べる。

 

もちろん、丁寧にやっていれば経営が成り立つ、というほど甘くもありません。

 

どれだけ良い仕事をしても、利益が残らなければ、給与も上げられないし、設備も整えられない。

 

私の仕事は、「良いサービス」と「続けられる経営」が両立する形をつくることです。

まだまだ試行錯誤しています。

 

昔の記事には、「無駄なサービスなど一つもない」とも書いていました。

 

今は、そこもちょっと考えが変わりました。

 

私たちが大切だと思っているサービスでも、お客様が求めているとは限りません。

 

説明をしっかり聞きたい方もいれば、今日は早く帰りたい方もいる。

 

会話を楽しみたい日もあれば、静かに目を閉じていたい日もある。

 

一律に何かを足していくことが、丁寧さではないのでしょう。

 

必要なことを見極めて、その方に合った時間をつくる。

 

カウンセリングも、シャンプーも、スパも、仕上げの説明も、そのためにあるはずです。

 

仕上がりに満足していただけたか。


待ち時間は長くなかったか。


説明に納得していただけたか。


ご予算や生活の変化に、こちらが気づけていたか。

 

価格への感想を、スタッフの熱量不足だけで片づけない。

そして、

「ここに来ると、髪も気持ちも整う」
「この人に相談すると、少し安心する」
「今回も来て良かった」

そう感じていただける店でありたい。

 

私がこれから目指している「美しく、健やかに」ということにも、つながっています。

 

そして、その場所をつくるスタッフ自身にも、健やかでいてほしい。

 

お客様に向ける温かさと、働く人を大切にすることは、同じ店の中で両立させたいのです。

 

だから、これからも「色と熱」は大切にしたいなと。

 

「ほかのお店で、ちょっと染めちゃった」
「急いでいたから、近くで切っちゃった」

いいんです。

そのときの暮らしに合う選択をしていただければ。

 

また相談したいとき、大切な予定の前、少し気分を変えたいとき。

 

思い出していただける店でありたいと。

 

でも、できれば定期的に会いに来ていただけると、うれしいです。

できれば月一できていただけると嬉しいです。

そこは経営者なので、正直に言っておきます。笑

 

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