30年目を迎える美容師の過去、現在、そして未来 vol.60 「それでも、そばにいてくれた人たちへ。」

とある男性美容師の過去・現在・そして未来

気がついたらなんと60話まで、この物語を書いてきた。

 

 

ずいぶん端折ったとはいえ、

よくこんなに書くことがあったなと思う。

 

 

上京して、

美容師になって、

店長になって、

 

 

独立して、

一店舗だった店が増えていった。

 

スタッフも増えていった。

 

自分の会社が少しずつ大きくなっていくのが、

ただただ嬉しかったし、

そのまま突き進むことしか考えなかった。

 

 

でも、

この物語をここまで読んでくれた人なら、

その先を知っている。

 

 

増えた店舗は、

一つ、また一つと減っていった。

 

スタッフも、

一人、また一人と離れていった。

 

 

売上が落ちた。

お金もなくなった。

自信もなくした。

 

 

私はこの59話まで、

そんな自分のことばかりを書いてきた。

 

 

でも、

この過去と現在の話を一旦ここで区切るなら、

最後に書いておきたい人たちがいる。

 

今も、一緒に働いてくれているスタッフたちだ。

 

彼らは、

会社が大きくなっていく姿だけを見てきたわけではない。

 

 

新しい店ができる。

スタッフが増える。

売上が上がる。

そんな景色も見てきた。

 

 

でも、そのあと、

店がなくなるところも見た。

仲間が辞めていくところも見た。

会社が小さくなっていくところも見た。

 

 

きっと、

不安だったと思う。

「この会社、大丈夫なのかな」

そう思ったことも、

一度や二度ではなかっただろう。

 

 

私に聞けなかったことも、

たくさんあったと思う。

 

 

それでも、

今も、ここにいてくれている。

 

 

当たり前じゃない。

この59話を書いてきて、改めてそう思う。

 

 

経営者だから、

「スタッフを守る」

なんて言ってきた。

 

でも、

本当は逆だったのかもしれない。

 

 

苦しい時期、

会社を支えてくれたのは、

今も店に立ってくれているスタッフたちだった。

 

 

お客様が来てくれるのも、

店が営業できるのも、

会社が今日まで続いているのも、

みんなが働いてくれたからだ。

 

 

だから、

今いるスタッフには、

ちゃんと言いたい。

 

残ってくれて、ありがとう。

 

 

そして、

もう一人。

この物語を書くうえで、

絶対に書かなくてはいけない人がいる。

 

 

妻だ。

 

 

おそらく、

私以上に私の会社を心配してきた人だと思う。

 

 

私が、

「店を出す」

と言えば、

応援してくれた。

 

求人も協力してくれた。

 

本当は、死ぬほど不安だったろだろう・・・。

 

借金が増える。

本当は、死ぬほど不安だったろだろう・・・。

 

 

スタッフが辞めれば、

落ち込んでいる私の話を聞いてくれた。

本当は、死ぬほど不安だったろだろう・・・。

 

 

そして、店を手放すことに。

本当は、死ぬほど不安だったろだろう・・・。

 

 

経営者である私は、

自分で決めたことだ。

 

失敗しても、

自分の責任だと言える。

 

 

でも妻は違う。

 

 

自分が決めたわけでもないのに、

私が背負った借金も、

会社の不安も、

辞めていくスタッフのことも、

ずっと隣で見続けなければならなかった。

 

 

 

どれだけ、心配をかけ、不安にさせただろうか。

 

「大丈夫」

私は何度となく、

根拠もなくそう言っただろう。

 

 

たぶん、

全然大丈夫じゃなかった。

 

 

それでも、

妻はずっとそばにいてくれた。

 

 

成功したときだけじゃない。

 

むしろ、

うまくいかなくなってからのほうが長かった。

 

 

それでも、

離れずにいてくれた。

 

だから、

ただただ、

ありがとう。

 

そして、

たくさん心配をかけて、ごめん。

 

 

今さらだけど、

ちゃんと書いておきたい。

私はこの物語の中で、

たくさんの人との出会いと別れを書いてきた。

 

 

離れていった人たちからも、

たくさんのものをもらった。

そして、

今もそばにいてくれる人たちからは、

それ以上のものをもらい続けている。

 

 

店舗の数でもない。

スタッフの人数でもない。

売上でもない。

 

 

59話かけて、

ようやく気づいたことがある。

 

 

会社にとって一番大切なのは、

大きくすることではなく、
一緒に歩いてくれる人を大切にすることなのかもしれない。

 

 

ずいぶん遠回りした。

高い授業料も払った。

 

失ったものも、

たくさんある。

でも、

店に行けば、

一緒に働いてくれる仲間がいる。

 

 

家に帰れば、

妻がいる。

 

 

だったら、

それで十分じゃないか。

 

 

そう思えるようになった。

 

 

私はこれから、

何店舗つくるとか、

何人の会社にするとか、

そんなことはもうわからない。

 

 

また失敗するかもしれない。

 

たぶん、

これからも妻を心配させるだろう。

 

 

スタッフに、

「社長、また何か始めたよ」

なんて思われることもあるだろう。

 

 

それでも。

今度は、

大きくすることばかりを考えるのではなく、

今そばにいる人たちと、
できるだけ長く、一緒に笑っていられる会社をつくりたい。

 

 

それが、

今の私が思う「成長」なのかもしれない。

 

 

60話。

ここで、この物語を一度区切ろうと思う。

 

 

もちろん、

私の美容師人生が終わるわけではない。

 

 

残念ながら、

まだまだ続く。

 

 

だから最後は、

経営者らしい言葉でも、

格好いい言葉でもなく、

これだけでいい。

今も一緒に働いてくれているみんなへ。

 

そして、

ずっと隣で支えてくれた妻へ。

 

本当に、ありがとう。

 

そしてこれからも、

 

 

よろしくお願いします。

 

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