30年目を迎える美容師の過去、現在、そして未来 vol.55

とある男性美容師の過去・現在・そして未来

新型コロナウイルスで、生活様式に大きな変化が起きたのだが、

美容業界にも変化が起き始めた。

 

 

特に大きく変わったと感じたのが、

美容師の「働き方」だった。

 

 

業務委託。

フリーランス。

面貸し。

シェアサロン。

 

 

もちろん、

これらの働き方はコロナによって突然生まれたわけではない。

それ以前から、少しずつ広がっていた。

 

ただ、コロナを境に、

私にはその流れが一気に加速したように見えた。

 

 

会社に所属しなくても働ける。

店を持たなくても独立できる。

自分でお客様を持っていれば、

場所を借りて仕事ができる。

 

 

そして、

売上を上げれば、

会社員として働くより高い報酬を得られるケースもある。

 

 

美容師にとって、

選択肢が増えた。

それ自体は、

決して悪いことではない。

 

 

むしろ、

美容師という職業の可能性が広がったとも言える。

 

 

ただ――

人を雇い、

人を育て、

店舗を増やしていく。

 

 

それを「美容室経営の王道」だと信じてきた私には、

その変化が、

まったく違う景色に見えていた。

 

 

会社がお金と時間をかけて、

美容師を育てる。

スタイリストになり、

お客様がつき、

売上が上がる。

 

 

ようやく会社に利益をもたらしてくれる存在になった頃、

その美容師には、

いくつもの選択肢が待っている。

 

 

独立する。

業務委託になる。

フリーランスになる。

シェアサロンで働く。

 

 

もちろん、

それを責めることはできない。

自分の人生だ。

自分にとって、

より良い条件を選ぶのは当然だと思う。

 

 

ただ、経営者側から見える景色は、

少し違う。

人を採用する。

育てる。

給料を払う。

社会保険を負担する。

教育する。

 

 

そして、ようやく一人前になった。

さあ、

これから一緒に会社を大きくしていこう。

 

 

そう思った頃に、

その人の目の前には、

「会社を離れた方が自由で、収入も増えるかもしれない」

という選択肢がある。

 

 

これは、

なかなか厳しい。

 

 

だからといって、

時代の流れに文句を言っても仕方がない。

 

美容師側が悪いわけでもない。

業務委託が悪いわけでもない。

シェアサロンが悪いわけでもない。

 

 

ただ、

時代が変わったのだ。

 

そして、

一経営者がどうこうできるような問題でもなかった。

 

 

私は少しずつ、

考えるようになった。

人を増やして、

店を増やして、

会社を大きくする。

 

それが本当に、

これからも美容室経営の「正解」なのだろうか。

創業してから、

ほとんど疑ったことがなかった。

 

 

5店舗。

10店舗。

あれほど当たり前のように描いていた未来が、

少しずつ、

遠くなっていった。

 

 

いや。

遠くなったというよりも、

私自身が、その未来を本当に望んでいるのか。

 

 

初めて、

分からなくなり始めていた。

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