30年目を迎える美容師の過去、現在、そして未来 vol.52

とある男性美容師の過去・現在・そして未来

3店舗目は、立地にも恵まれた。

もちろん、それだけではない。

抜擢した店長、そしてスタッフの頑張りのおかげで、2店舗目よりも早く軌道に乗った。

 

 

創業してから3店舗。

当時としては、比較的ハイペースな出店だったと思う。

 

 

その頃になると、メーカーやディーラー、同業のオーナーから、よく聞かれるようになった。

「なんでそんなに早く出店できるんですか?」

でも、本当に答えられなかった。

「いや〜、たまたまですよ。」

今思えば、それが一番正直な答えだった。

 

 

特別な経営ノウハウがあったわけでもない。

経営理念をつくった。

出店目標を決めた。

求人をする。

集客する。

そして、目の前のお客様にまた来てもらう。

 

 

ただ、それを愚直に繰り返しただけだった。

 

 

もちろん、それが一番難しいのだけれど。

 

それでも結果は出た。

すると、人は欲が出る。

 

「4店舗目を出したい。」

 

 

その頃の私は、自分の考え方が間違っているなんて、一ミリも思っていなかった。

そして、次に悩んだのは店長人事だった。

 

当時、2店舗目の店長は人柄が良く、会社への協力も惜しまない。

 

長く一緒に働いてきた、大切な存在だった。

 

ただ、一つだけ弱点があった。

 

売上だった。

 

 

一方で、店長よりも圧倒的に売上を上げるスタッフがいた。

 

仕事はできる。

 

指名客数も会社トップクラス。

 

しかし、遅刻が多い。

 

協調性にも課題があり、「正直苦手です」と話すスタッフもいた。

 

個性が強かった。

 

その頃の店内は、どこかチームになり切れていなかった。

 

仲は悪くない。

 

でも、お互いを信頼している空気でもない。

 

やがて店長への不満も聞こえてくるようになった。

 

そんな状況を見ながら、私はこう考えた。

 

「新店舗の店長にすれば、責任感が生まれるんじゃないか。」

 

 

美容師としての実力は申し分ない。

 

売上もある。

 

肩書きを与えれば、人は変わる。

 

そう信じていた。

 

いや、そう信じたかったのかもしれない。

 

だから私は、4店舗目の店長に抜擢した。

 

理由は、とてもシンプルだった。

 

売上が一番だったから。

 

今なら分かる。

店長に必要なのは、売上だけではなかった。

 

でも、そのときの私は、まだ何も知らなかった。

タイトルとURLをコピーしました