3店舗目は、立地にも恵まれた。
もちろん、それだけではない。
抜擢した店長、そしてスタッフの頑張りのおかげで、2店舗目よりも早く軌道に乗った。
創業してから3店舗。
当時としては、比較的ハイペースな出店だったと思う。
その頃になると、メーカーやディーラー、同業のオーナーから、よく聞かれるようになった。
「なんでそんなに早く出店できるんですか?」
でも、本当に答えられなかった。
「いや〜、たまたまですよ。」
今思えば、それが一番正直な答えだった。
特別な経営ノウハウがあったわけでもない。
経営理念をつくった。
出店目標を決めた。
求人をする。
集客する。
そして、目の前のお客様にまた来てもらう。
ただ、それを愚直に繰り返しただけだった。
もちろん、それが一番難しいのだけれど。
それでも結果は出た。
すると、人は欲が出る。
「4店舗目を出したい。」
その頃の私は、自分の考え方が間違っているなんて、一ミリも思っていなかった。
そして、次に悩んだのは店長人事だった。
当時、2店舗目の店長は人柄が良く、会社への協力も惜しまない。
長く一緒に働いてきた、大切な存在だった。
ただ、一つだけ弱点があった。
売上だった。
一方で、店長よりも圧倒的に売上を上げるスタッフがいた。
仕事はできる。
指名客数も会社トップクラス。
しかし、遅刻が多い。
協調性にも課題があり、「正直苦手です」と話すスタッフもいた。
個性が強かった。
その頃の店内は、どこかチームになり切れていなかった。
仲は悪くない。
でも、お互いを信頼している空気でもない。
やがて店長への不満も聞こえてくるようになった。
そんな状況を見ながら、私はこう考えた。
「新店舗の店長にすれば、責任感が生まれるんじゃないか。」
美容師としての実力は申し分ない。
売上もある。
肩書きを与えれば、人は変わる。
そう信じていた。
いや、そう信じたかったのかもしれない。
だから私は、4店舗目の店長に抜擢した。
理由は、とてもシンプルだった。
売上が一番だったから。
今なら分かる。
店長に必要なのは、売上だけではなかった。
でも、そのときの私は、まだ何も知らなかった。

