2店舗目も、なんだかんだで軌道に乗り始めていた。
もちろん順風満帆ではない。
店長に据えたスタッフと中途入社のスタッフがぶつかる。
価値観の違い。
立場の違い。
思いの違い。
今でこそ「チームビルディング」なんて言葉を使うが、当時はそんな言葉も知らない。
ただただ、
「なんでうまくいかないんだろう・・・」
と頭を抱えていた。
それでも不思議なもので、
問題をひとつ乗り越えると、
また次の問題がやってくる。
そしてその繰り返しの中で、
いつしか私はこう思うようになっていた。
「なんだ、意外と何とかなるじゃないか」
今思えば、
ここが分岐点だった。
本当は一度立ち止まって考えるべきだったのだ。
利益はどれくらい残っているのか。
本当にこの出店は正解だったのか。
スタッフは幸せなのか。
自分はどこへ向かおうとしているのか。
しかし当時の私に、
そんな発想はなかった。
前に進むことが正義。
成長することが正義。
そして、
成長とは出店すること。
私だけではない。
当時の美容業界には、
そんな空気があった。
店舗数が多いサロンは勢いがある。
店舗数が多いオーナーは凄い。
出店している経営者は成功者。
だから私も、
出店することが経営だと思っていた。
2店舗目を出して2年。
気付けば、
また次の物件を探していた。
今となっては不思議なのだが、
当時はスタッフが辞める未来をあまり想像していなかった。
みんな頑張ってくれる。
みんな成長する。
みんな会社と一緒に前へ進む。
そんな都合の良い未来を、
どこかで本気で信じていたのだと思う。
うまくいってる時ほど、気が付かないことってあるのだ。
なのに、
スタッフのためにも次のステージが必要だ。
新しい店が必要だ。
もっと活躍できる場所を作らなければならない。
そう考えていた。
もちろん今でも、
スタッフに成長の機会を作ることは大切だと思う。
ただ、
それは必ずしも出店である必要はない。
しかし当時の私は、
そんなことを考えもしなかった。
そして見つけてしまう。
駅近。
手頃な家賃。
それなりの乗降者数。
しかも2路線利用可能。
本店からは電車で30分。
決して近くはない。
でも、
そんなことは気にならなかった。
物件資料を見ながら、
私は思った。
「ここは、いいぞ・・・」
そして、
またしても即決するのである。
続く


