第1話で書いたように、子供の頃の私はシャアを悪者だと思っていた。
第2話で書いたように、なぜかガンダムよりグフやゲルググに惹かれていた。
そして今回書きたいのは、その先の話だ。
ガンダムを見返していて気付いた。
私が変わったのは価値観ではない。
見える景色が増えたのだ。
子供の頃の私はアムロ目線だった。
主人公だからだ。アムロが正しい。
シャアは敵。だから悪。
とても分かりやすい。
でも50歳になった今は違う。
シャアにも目が行く。
ランバ・ラルにも目が行く。
マ・クベにも目が行く。
それぞれの立場で見てしまう。
そして思う。
誰も自分を悪だと思って生きていない。
みんな自分なりの正義を持っている。
美容師になってからも同じだった。
若い頃の私は、とにかく売れる美容師になりたかった。
技術を磨きたい。
売上を上げたい。
指名を増やしたい。
それだけだった。
店長の気持ちなんて分からなかった。
経営者の悩みなんて想像もしていなかった。
でも店長になると景色が変わる。
独立するともっと変わる。
スタッフを雇うとさらに変わる。
店舗を増やすとまた変わる。
そして失敗すると、もっと変わる。
昔の私は、
店舗をどんどん増やしている経営者を見ると、
「すごいな」
と思っていた。
何十人ものスタッフがいて、
次々と出店していく。
それが成功だと思っていた。
でも今は違う。
もちろん今でも凄いと思う。
ただ、それだけが正解ではないと思うようになった。
一店舗を何十年も守り続ける経営者もいる。
スタッフ数は少なくても、
地域のお客様から愛され続けている。
それも凄い。
安く多くのお客様に喜んでもらう経営者もいる。
高単価で価値を提供する経営者もいる。
教育に力を入れる経営者もいる。
自由を重視する経営者もいる。
どれが正しいのだろう。
正直、分からない。
若い頃の私は正解を探していた。
成功している人を見て、
「これが答えだ」
と思っていた。
でも50歳になった今は違う。
答えが一つではないことを知った。
ガンダムも同じだ。
アムロにはアムロの正義がある。
シャアにはシャアの正義がある。
ランバ・ラルにはランバ・ラルの正義がある。
マ・クベにはマ・クベの正義がある。
だから面白い。
もし全員が同じ考えなら物語は成立しない。
美容業界も同じだ。
売上を追いかける美容師がいる。
技術を追求する美容師がいる。
独立を目指す美容師がいる。
生涯現役を目指す美容師がいる。
店舗展開を目指す経営者がいる。
一店舗を守り続ける経営者がいる。
どちらも間違いではない。
それぞれに覚悟がある。
それぞれに見ている景色がある。
だから最近は、人を見る目も少し変わった。
昔は、
「なぜそんな選択をするんだろう」
と思うことも多かった。
でも今は、
「その人にはその人の理由があるんだろうな」
と思うことが増えた。
理解できるとは限らない。
賛成できるとも限らない。
それでも、その人の立場から見える景色を想像するようになった。
そして、それこそが美容師という仕事の面白さなのかもしれない。
美容師は髪を切る仕事だ。
でもそれだけじゃない。
人を見る仕事でもある。
お客様を見る。
スタッフを見る。
経営者を見る。
そして自分自身を見る。
立場が変わるたびに見える景色が変わる。
そのたびに考え方も変わる。
だから飽きない。
だから面白い。
小学生の頃の私は、ガンダムを見ていた。
50歳になった私は、人を見ている。
そして不思議なことに、
歳を取るほど答えが増えるのではなく、
問いが増えていく。
これが正解なのか。
あの選択で良かったのか。
もっと違うやり方があったのではないか。
今でも迷う。
今でも考える。
でも、それでいいのだと思う。
アムロにも答えはなかった。
シャアにも答えはなかった。
だからあの物語は今でも語り継がれている。
経営も同じなのかもしれない。
美容師人生も同じなのかもしれない。
まだ迷っている。
まだ探している。
でも、だから面白い。
ガンダムを見返しながら、そんなことを考えていた。
きりがないので、
ガンダムの話、終わり。

