3年目を迎える弱小美容師は、実に伸び悩んだ。
同期がどんどん指名が増えていく中、実に伸び悩んだ。
今思えば、単なる準備不足。努力不足。
若さゆえ、自身は美容師である前に社会人であり「営業マン」であるということをどこか忘れていた。
かっこよければ、センスが良ければ、技術が上手ければ、指名客は増えるしモテると勘違いしていたのだろう。
若さゆえ、自分が中心となってしまう。
お客様あっての自分ということに気づけていない。
会社への感謝も、どこか薄かったのだろう。
先輩たちも、どこか言うのを諦めていただろう。
それぐらい、態度が良いとは言えなかったと思う。
どこか尖ってるのが、カッコいいと勘違いしていたのがまさにこの頃である。
当時の自分に言ってあげたい。
「君、ク・ビ・ね。」
生意気だし、なんか不真面だし。
だがしかし、やはりコンテストとなると燃えていた。
なんとか入賞して目立ちたい。モテたい。
じゃない、爪痕を残したい。
自分の配属されたサロンは、長い歴史を持つ本店。
常連でご高齢のお客様が多い中、そして洗練されたおしゃれ原宿サロンとは程遠い雰囲気の環境の中、私がプチカリスマの称号をもらうには、コンテストしかないのだ。
何度も切り直し、何度も染め直し、そしてなんとかイメージに近づける・・・。
コンテスト当日までの描写を書くのは、だるい。割愛。
だって、興味ないでしょ?
はい、私は3年目にして、
なんと優勝いたしました。パチパチ。
まわりはびっくりです。
だって、あのダサい田舎者が優勝しちゃうんだもん。
あのクソ生意気な天然パーマが優勝しちゃうんだもん。
翌年のコンテスト。
はい、私は4年目にして、
なんと優勝いたしました。
2年連続で優勝です。
この大会は2年連続の優勝者に、ヨーロッパ研修が贈られます。太っ腹です。
当時の美容室はかなり儲かっていたのでしょう。
スタッフを馬車馬の如く働かせて社会保険も入らず安月給だから利益が出ていたに違いない。うらやま。
ありがたく、いただきました。
でもね、優勝してもやっぱりあんまりモテなかったです。
こりゃもう、人間性の問題ですね。



