承認欲求や自己顕示欲の強かった私は、とにかく早くデビューしたかった。
しかし、自分は器用だと思っていたし、なんでもちょっとやり込めばそれなりに上手くできるようなところもあったので、周囲がどんどん合格していく中、遅れを取り始めている自分に焦りを感じていた。
そうなると、デビューしたいという気持ちよりも「カッコ悪い」という気持ちが強くなる。
モデルをカットしても2時間かかってしまうし、カットも理解するのに時間がかかりなかなか理解できない。
単純に、練習量と理解力が足りないのだろう。
※ちなみに私は腕を組むと左手が上にくるので「右脳派」で「感覚」や「感性」が強いそうです。悪く言えば「動物的」。もっと悪く言えば「馬鹿」
そんな中、研修サロン入店の時期になる。
そこの会社にはデビューを控えたアシスタントが技術責任者に見てもらいながら低料金で施術を提供する「ジュニアサロン」がある。
そこで3ヶ月間お客様を担当し、所属サロンに戻ってデビューとなる。
そしてこれは美容室あるあるなのだが、サロンの状況的に「とにかく早くデビューしてほしい」という空気になる。
新店舗出店、退職者・・・。スタイリストの人数が必要なのだ。
そこで白羽の矢が立つ。
「吉田くん、そろそろ、ジュニアサロン行こうか」
見切り発車もいいとこである。
このまま行ったって不安しかない。
とはいえ、そこはやはりカッコつけ承認欲求モンスター。
「はい、いけます。ありがとうございます!」
やれます感だけはだせる。カッコつけだから。
入社後1年で異例のジュニアサロンデビューである。
やる気に満ち溢れて・・・、るわけがないじゃないか!
モデルなんて数人しかやってないんだぞ!
しかもそこのディレクターはモラハラ体質な女鬼(メッキ)。
若い男子は絶好の獲物であろう。
※あくまで「実在の人物をもとにした」フィクションです。
不安しかないっつーの。
不思議なもんで、
ミスしないようにしようとすればするほど、ミスしたり、
言われれば言われるほど、手が震えるのである。
3ヶ月の修行期間、技術はもちろん、
どんな屈辱を受けようが歯を食いしばって耐える、受け流す、ごまかす、言い訳を考える、反省しているふりをする、ごまをする・・・
美容師に必要なスキル以外にも、
「生存本能」を磨くこともできた、そんなメッキメキな3ヶ月だったと思う。
色々言われたなー。
録音しておけばよかったなー。
ポケベルじゃ無理か・・・。


