独立店舗に張り付いて奮闘しながらも、少しづつ直営店の管理も任されるようになる。
それぞれの店長を育て、スタイリストを育て・・・。
自分としては本当の意味で経営者になれている気はしていない。
なぜだろう。
自分自身が経営しているというより、どちらかといえば「決められ、管理されている」中で、自分が会社を経営している感覚はまったくなかった。
それはある意味幸せかもしれない。
本来全て自分決めて自分が責任を取る・・・。
しかし、フランチャイズのメリットは本部があるということだ。
ある程度、決められていることをこなす、これで成立するのだ。
求人も教育も、自分一人ではなく会社がある程度主導してくれる。
逆をいえば、自分が育てた人財も、本部直営店舗に異動になってしまうこともある。
価格、人事、ブランディング・・・、なんの決定権もない。
これはある意味、店長の延長にすぎない、そんな気さえしてくる。
そして、役員報酬も、自分で決められないのだ。
売上をいくらやっても、固定。
普通の社員なら、この売上をやれば役員報酬以上にもらえている。
しかし、
「店舗の利益は、あなたが売上上げれば上げるほど出るでしょ?あなたは固定給なんだから」
たしかに、そうなのだ。
私は固定給だから、その固定給に相当する以上の売上を上げれば、すべて利益になるのだ。
結果、毎年大きく黒字化できていた。
ここまで利益が出たのなら、「税金対策」として設備や備品を新調したりして、できるだけ無駄(ではないのだが)に高い税金を払わずに決算を終えたい、そう思いもする。
がしかし、会社担当の税理士は「しっかり法人税は払う」という方針で税金対策にはあまり耳を傾けてはくれない。
これって、私は周囲から本当に経営者として見られているかという気にすらなってしまう。
まあ、未熟だし経営者と言うには程遠い名ばかりの代表取締役で、実態は社員でもない「業務委託」だ。
借金を背負い、出資し、なのに何も決められない「経営者」
経営をしているなんて、その時はこれっぽっちも思っていなかった。
FCオーナーという立場になり、ますます家族との時間は減った。
子供と遊びに行くのも、4ヶ月に1回行ければ良い方であった。
一番父親といっぱい遊びたい時期だっただろう。
妻としても、一番育児が大変な時期で、もっと手伝ってほしいことがたくさんあっただろう。
少しでも休みを取ってあげたい。
その気持を本部に伝えるが、
「いっぱい稼いでりゃ、女は文句言ったりしないよ」
しっかり主張できない自分も悪いのだが、当時はトップの価値観に従わなければいけない「空気」があった。
なぜなら、今後が「やりにくい空気」になってしまうからだ。
空気を読んで、ある程度うまく演じることができないと、組織で風当たりが強くなる、当時はそんな空気だった。
現に、私が完全に組織から離れるまでの間、3人も社長が交代した。
それぐらい、トップの機嫌で物事が決まる、そんな組織だった。


