先日、新型LEXUS NXが発表された。
私はつい最近、NX350h F SPORTに乗り換えたばかりだ。
https://lexus.jp/models/nx/worldpremiere/
タイミングがいいのか、悪いのか(笑)。
当然、新型が発表されれば気になる。
「しまった。もう少し待てばよかったか?」
そんなことも一瞬考えた。
でも、新型NXの写真を何度も見ているうちに、少し違う感情が湧いてきた。
「新しいNX、カッコいいな」
ではなく、
「LEXUSって、これからどこへ行くんだろう?」
という感情だった。
僕が好きだったLEXUS
私はつい最近まで、初期型のNXに乗っていた。
7年近く乗った。
歴代の車の中でも、かなり長く乗った一台だ。
そして今になって思う。
私は、あの頃のLEXUSが結構好きだったんだと思う。
3眼LEDヘッドライト。
独立したL字型のデイライト。
流れるシーケンシャルウインカー。
車内にはアナログ時計。

ボタンもたくさんあった。
今の基準で見れば、少しゴチャゴチャしているのかもしれない。
でも運転席に座ると、
「機械を操作している」
そんな感覚があった。
そして何より、
どこから見てもLEXUSだった。
新しいことは、本当に良いことなのか
今回発表された新型NXは、当然ながら進化している。
技術も新しい。
ディスプレイも大きい。
インテリアもシンプルになった。
今の時代らしいデザインだと思う。

でも、個人的にはあの「ツルッ」とした内装がどうも好きになれない。
最近のEVやテスラに代表されるような、大きな画面を中心にして物理スイッチを極力なくしていくデザイン。
もちろん好きな人も多いと思う。
ただ私は、
高級車にまでそこまでシンプルさを求めていない。
ステアリングからLEXUSの「L」までなくなった。
3眼もなくなった。
特徴的だったL字型のデイライトもなくなった。
一つひとつは小さなことなのかもしれない。
でも、ふと思った。
ブランドって、そういう小さなものの積み重ねなんじゃないだろうか。
ベンツは、ずっとベンツだ
メルセデス・ベンツには、スリーポインテッドスターがある。
BMWにはキドニーグリルがある。
アウディにはシングルフレームグリルがある。
もちろん、それぞれ時代に合わせてデザインは変わっている。
BMWのキドニーグリルなんて、昔とは比べものにならないほど大きくなった。
賛否もある。
それでもBMWは、
「じゃあキドニーグリルをやめよう」
とはしない。
形を変えながら、残していく。
変えないのではなく、進化させている。
これがブランドなんじゃないかと思う。
LEXUSにも、ようやく「顔」ができたと思っていた
LEXUSにもそれができた。
スピンドルグリルだ。
登場した当初は散々言われた。
派手すぎる。
怖い。
プレデターみたいだ。
それでもLEXUSは使い続けた。
その結果、街中でフロントマスクを見ただけで、
「あ、LEXUSだ」
と分かるようになった。
これはすごいことだと思う。
ブランドが長い時間をかけて手に入れた「記号」だからだ。
ところが最近のRXやLBXを見ると、その輪郭が少しずつ曖昧になってきた。
いわゆる「スピンドルボディ」という考え方らしい。
グリルだけではなく、車体全体でスピンドルを表現する。
理屈は分かる。
でも個人的には、どうしてもあのグラデーションのようにボディへ消えていく感じが好きになれない。
申し訳ないけれど、
ちょっと口髭みたいに見える(笑)。
だから今回の新型NXを見て、一つホッとしたことがある。
ちゃんとスピンドルがある。
輪郭がある。
「ああ、LEXUSだ」
と分かる。
これは素直に嬉しかった。
そして、なぜか会社のことを考えた
ここまで考えていて、ふと自分の会社のことを思い出した。
私は美容室を経営して14年になる。
その間、本当にいろいろなことを変えてきた。
店舗を増やした。
仕組みを変えた。
教育を変えた。
給与を変えた。
ルールを変えた。
時代が変われば、会社も変わらなければならない。
そう思ってやってきた。
実際、それは間違っていなかったと思う。
でも一方で、
変えること自体が目的になっていた時期はなかっただろうか。
そんなことを考えた。
「昔からやっている」は、悪なのか
経営をしていると、
「古い体質を変えよう」
「今の若い世代に合わせよう」
「時代に適応しよう」
という言葉をよく聞く。
私自身も何度も言ってきた。
もちろん必要なことだ。
昔のやり方を、そのまま押し付ければいいとは思わない。
でも最近、
昔から続いているものには、続いている理由もあるんじゃないか
と思うようになった。
会社の理念。
大切にしてきた価値観。
お客様との向き合い方。
美容師という仕事への考え方。
スタッフに伝えてきたこと。
時代に合わせて「伝え方」は変えていい。
制度だって変えていい。
働き方も変わって当然だ。
でも、
会社が何者なのかまで変えてしまったら、それは進化ではなく別の会社になってしまう。
会社にも「スピンドルグリル」が必要なのかもしれない
ベンツのスリーポインテッドスター。
BMWのキドニーグリル。
LEXUSのスピンドルグリル。
それと同じように、
会社にも、
「これだけは変えない」
というものが必要なのかもしれない。
創業したときから大切にしてきたものがある。
「人を美しく、人生の可能性を拡げる会社」
そして、
地域にとってなくてはならない存在になること。
13年も会社をやっていると、いろいろなものが変わる。
人も変わる。
店舗数も変わる。
売上も変わる。
自分自身も変わった。
これから美容室だけではないことを始めるかもしれない。
でも、
何をする会社なのかは変わっても、何のために存在する会社なのかは変えなくていい。
そんな気がする。
変えることと、進化すること
新しいものを見ると、人はどうしてもそちらが良く見える。
車もそうだ。
経営もそうだ。
新しい制度。
新しい働き方。
新しいビジネスモデル。
新しい価値観。
もちろん、新しいものを否定するつもりはない。
でも、
新しい=進化
ではない。
残すものを決めたうえで、その周りを変えていく。
それが本当の進化なのかもしれない。
BMWがキドニーグリルを残しながら進化してきたように。
LEXUSがスピンドルを、これからもLEXUSらしく進化させていくように。
会社も、
そして人間も、
「何を変えるか」より、「何を変えないか」を決めることの方が難しい。
50歳になって、そんなことを考えるようになった。
そして新型NXを散々眺めた結果。
今、私が一番カッコいいと思っているNXは――
つい最近まで乗っていた、初期型NXだったりする。
……手放してから気づくなよ、という話である(笑)。



