当時は美容免許を取得するには1年間の実務経験がないと筆記試験に受かっても実技試験は受けられなかった。
まずは筆記試験に受からなければ・・・
入社してまもなく筆記試験が行われるのだが、試験の時間や会場などの詳細が記された書類を見ると、
会場「東京国際大学」
最寄駅「霞が関」
とある。
地図ももちろん載っている。
私はこの辺の地理や電車の乗り継ぎなどよくわからないので、先輩にや店長に聴くわけです。
「ここ、どうやって行けばいいですか?」
先輩は「ああ、霞が関ね。北千住のりかえで日比谷線だよ。今年は東京の大学でやるんだね!」
オッケオッケ。日比谷線ね。確かに「霞が関」を確認。
当日、霞が関の駅から地上へと上がると、おお!「〇〇省」やら「国会議事堂」があるではないか!
これこれ!東京!
変なテンションで地図を見ながら会場へ向かうが・・・、
なんかおかしい。
そもそも、道も違えば建物も違う・・・。なんじゃこりゃ。
物々しい大きな門の前にいる警備員に「すいません、ここの大学ってどうやって行けばいいでしょうか?」
警備員「ふむふむ・・・。ん?これ・・・、」
「?」
警備員「君、これ、埼玉の学校だよ」
「!」
警備員「ここから池袋にいって乗り換えて、東武東上・・・」
「13時までに行かなきゃ行けないんですが・・・」
警備員「あ、無理無理!間に合わんよ」
絶望。
六本木で飲んで電車で寝過ごして起きたら東武動物公園だったときぐらい絶望。
今から向かっても30分以上かかるとか。
もう帰ろうかな。
帰って先輩ぶん殴ろうかな。
いや、殴るのはまずい。とりあえず巴投げだな。
まあ、しっかり確認しなかった自分が一番悪いか。
遅れても、終わってても、事情を伝えるだけ伝えてみよう。
もしかしたら、があるかもしれない。
僅かな望みをつなぐべく、池袋へ向かうか。
さて、やってまいりました「霞が関」
東京国際大学で霞が関だけど埼玉・・・
千葉だってディズニーもドイツ村も空港も「東京」ってなってるし、
まあ許す!
埼玉は東京といっていた先生、あなたは間違っていなかった!疑ってすまん!
会場に向かうと、
「こちらにお並びください」
あら?もうとっくに受付時間は過ぎてるし、なんなら終わってもおかしくない時間・・・
「すいません、かくかくしかじか・・・・」
会場の係の人「そうみたいですね・・・。他にも結構間違えて東京に行ってしまった人がいたみたいで・・・。個別にグループで順次始めますので大丈夫ですよ。」
よかった・・・。
言ってみるもんだ。
埼玉には田舎者が多いのを実感した。
同士よ!みんなやっぱり、埼玉は東京だと聞かされてきたんだね!
めでたく受験を受けることもでき、なんとか学科試験は通過。
人にばかり頼ってはいけない。
自分で行動してどうにもならないとき、素直に質問しよう。
そう思えるようになった。
失敗は、決してマイナスだけではないのだ。
翌日、このことはしっかり先輩に伝えておいた。
「あ、そうなんだ。でも良かったじゃん」
◯ろすぞ。
いや、投げるぞ。
まあ、先輩も田舎モンってことで許す!


