「経営の神様」の言葉から学ぶ③ 【ファンがある】

失敗から学ぶ美容室経営。

ファンというものはありがたい。

相撲でも、それがひいきの力士であったなら、勝てば勝ったで無性に喜ぶし、負ければ負けたで心から 同情する。

欲もなし得もなし。相手のどこかに、自分の好むよさを見つけて、そのよさにただ懸命に応援するのである。

だから、スポーツ人でも芸能人でも、自分のファンはとても大事にするし、そのファンの期待にこたえるべく、自分のよさをより一層伸ばすために、日夜精進を重ねる。

そこに、スポーツ人、芸能人の向上の大きな励みがあるのだし、ひいてはスポーツ界、芸能界の発展の一つの大きな要素がある。

考えてみれば、私たちにもまたファンがある。

芸能界だけではない。個人にも、お店にも、また会社にも、それぞれにそれぞれのファンというものがあるのである。

そして陰に陽に力強い声援がおくられているのである。

おたがいに、この事実を改めて認識し直したい。

そして、このありがたい自分のファンを、もっと大事にし、その好まれている自分のよさを精いっぱい伸ばすようにつとめたい。

そこに個人の、お店の、そして会社の繁栄の鍵がある。

 

松下幸之助 「道をひらく」から抜粋

 

東京オリンピック。

いろいろありましたが、

やはりアスリートたちには感動させられました。

開催するのか、中止するのか。

結果論で言いたいことを言う人たちもたくさんいますが、

その人たちは自信をもって正解・不正解を論じることができるのだろうか。

美容室の経営に正解も不正解もありません。

経営者にも得意な経営スタイル、不得意な経営スタイルがあると思うし、

経営者それぞれに「重き」を置いているものも違うと思います。

 

自己犠牲が強めの経営者もいれば、あくまでドライでロジカルに考える経営者もいる。

Jan VašekによるPixabayからの画像

決して悪い事ではないと思うのですが、

「ご新規様」に異常なまでに低料金で集客しているサロンが今も昔も存在します。

もちろんすべてそうではないと思うのですが、

「ご新規様」ばかり優遇するあまり、「常連様」にいろんな角度から負担をかけていないだろうかと思うこともある。

 

「新規集客」にばかり偏り、

「新規数」と「広告費」の費用対効果に一喜一憂・・・。

 

過去に在籍し、お世話になったサロンは、

「時間があればチラシ配り」「時間がなくてもチラシ配り」

「お客様がいなければチラシ配り」「お客様がいてもチラシ配り」

 

それだけ「チラシ配り」が正義であり、「チラシ配り」での結果こそ評価の対象でした。

 

自分の客は自分で捕まえる。

 

なにも間違っていない。大正解です。

 

しかし、転職したての私は(給料が良いと聞いて安易に転職したクチです)、あまりそのチラシ配りが好きではありませんでした。

なぜか。

なんて言えばいいのか・・・。

言葉を濁さずに言うとするならば・・・、

嫌でした。

もちろん仕事ですし、そういう経営スタイルを理解してそのサロンにいるわけなので、嫌だからと言ってやらないなんて選択はありません。

ただメッチャ愚痴ってました。

サロンの中にいて他のスタイリストの技術や接客見てるほうが勉強になるし、ヘルプしたほうがお客さん早くお返しできるし。

他のスタイリストのヘルプなんて、自分のお客様にする最大のアピールチャンスでしたから。

 

今思えば鍛えられた部分もありますが、またやりたいかと言えばやりたくない。

しかし、集客はもちろん大事なので絶対やりたくないわけではない。

やらなければいけない時も来るだろう。

 

当時、勢いのあるサロンは実際それが主流でしたし、今もそうなのかもしれない。

 

集客を成功させる方法は、とにかく価格を極限まで安くすること。

 

しかし、

チラシで安く呼び込みをして、お店を満員にしている中で「待たせながら」「急ぎながら」「焦りながら」仕事をし、

その中で確実に「再来」につなげる方程式を確立できていただろうかと思うのである。

かなり失客もさせていたに違いないのである。

 

たくさんのお客さんを担当し、売上もあがり、

「今日もいっぱいお客さん来たね。良かったね!」となるだろうか。

まあ、なるんだと思います。

 

その日の売上さえ達成すれば、美容室はハッピーなのだろうか。

まあ、ハッピーなのでしょう。

 

しかし、疑念も残るわけで、

スタイリストは高いパフォーマンスを発揮しただろうか。

アシスタントは明日からも元気に働けるのだろうか。

お客様は我々の技術とサービスに対して満足以上の感動を得て帰り、また来てくれるのだろうか。

 

最近は減りましたが、たまにサロンのエントランスや外壁や窓に

「ご新規様カットカラー○○○○円!」「初回カット○○○円!」

と、デカデカと掲示してあったりする。

その横に「通常メニュー」があるのだが、明らかにお得。

 

常連のお客様はどう思うのだろう。

安さに代わる手厚いサービスを受けているのだろうか。

それとも、結局常連様も同じように割り引いているのだろうか。

どちらにしろ、

サロンの「売り」が「安さ」になってしまった場合、

永続する為には安くたくさんのお客様をこなす日々をこれからも続けていくということになる。

そして安さを求めたお客様は、「新規価格」のサロンを求め離脱していく。

 

10分1000円のカットハウス。

カット約1時間の滞在時間で6000円の美容室。

時間単価は全く同じである。

 

ということは、10分1000円の時間単価を下回り、1時間当たりの人時生産性6000円を下回るビジネスモデルは1000円カットに勝てない。

 

速さと安さで勝負するには、あらゆるサービスを削らなければいけない。

そのサービスを削られた状態で、

「ファン」が増えることはあるのだろうか。

 

100人呼んで、90人失客するサロンと

10人呼んだら、10人再来するサロン。

 

お客様の心、美容師の体に優しいサロンはどちらだろうか。

 

大事なのは目先の客数を増やすことではなく、

何度も足を運んでくれる「ファン」を増やすことなのではないか。

 

「ファン」が求めているものは、「安さ」だろうか。「技術」だろうか。

 

その求めているものは「ファン」当人にしかわからないとは思いますが、

安さだろうが技術だろうが、

結局その先には、大事にしてくれる「ホスピタリティ」や、気の利いた「サービス」や、また会いたくなる「人柄」があるから、「ファン」になってくれていると思うのです。

 

ビジネスを成功させるためには、もちろんもっとドライに考えたりしなければいけない一面もあると思いますが、

美容というビジネスには他の業種にはない、この業界にしか適応しないものがあるような気がします。

 

だからこそ、今の「安い日本」に飲み込まれることがあってはならないように思います。

 

「集客」のゴールは、

「何人集めたか」ではなく、

「何人ファンが増えているか」にすることが望ましいと思うのです。

 

「集客」に強くても、

「周客」してもらえる魅力をどれだけ磨けるか。

 

20人の新規客を集められる「集客力」と、

一人のお客様を年間20回来店させられる「周客力」。

 

まあ、どっちも必要ですけどね。

 

 

 

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